いじめとは?
三省堂の大辞林には、“自分より弱い立場にある者を,肉体的・精神的に苦しめること”とあります。
「いじめ防止対策推進法」では、“児童生徒に対して、(略)他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの”をいじめとしています。
以上複数の定義から見て、「いじめ」とは、「一方が一方に心身の苦痛を与える行為全般」であると言っていいでしょう。しかも、いまではその立場が入れ替わることも発生するので、加害者が被害者になるケースもあります。
いじめと環境について
いじめは、次のような環境にあると、発生しやすくなります。
例えば、
子どもにとってストレスの多い環境
大人が子どもを見ていない環境
子どもが「いじめをしてもよい」と思う環境
違いや多様性を認めにくい環境
上下のラベリングがつくられやすい環境
などです。
現在いじめられている子どもも、環境が変わればいじめられなくなる可能性がある、ということです
お子さんのいじめについてお悩みでしたら、今の環境を変えるのは有効な手段の一つと言えるでしょう。
いじめの原因、いじめる側からの言い分
いじめられる原因は1つではありません。いくつかの原因があり、そこからいじめへと発展していくのです。そして、中には子ども特有の残酷な面がそのまま垣間見る事ができる理由も存在します。ここでは、実際に小学校でいじめられる原因となっている主なものを取り上げて、いじめる側の言い分から紹介していきます。
◆可愛いから
容姿が整っていて男子から人気がある女の子は、ただ可愛いという事だけが原因となってしまい女子の中でいじめられるケースがあります。最初の頃は可愛くて羨ましいと思うのですが、そのうち少しずつ嫉妬へと変わっていき、ちょっとした事が引き金となりいじめへと発展していくのです。
部外者である男の子も、いじめを止めさせようとするような勇気ある子はなかなか現れず、結局女子のいじめを黙認していまいます。 子どもの社会ではカッコいいという理由で男の子がいじめられる原因になるよりも、可愛い事が原因で女の子がいじめられる方が多い様です。
◆偉そうだから
勉強もトップで、体育の時間もスポーツ万能で一通り何でもできる子は、いつの時代でもクラスに1人はいましたね。クラスの代表的な存在で、みんなをまとめるのが上手で人気者でも、一歩間違えるといじめられる原因を作ってしまいます。
何でもできる子に対し、最初の頃は「凄いな!」という尊敬の気持ちで接しているのですが、次第に鼻につくようになり、何でもできるからって偉そうにしているという理由でいじめが始まるのです。
他の子よりも素早く何でもでき、頭の回転も良く皆に指示を出す事もできるので先生からの信頼も厚いでしょう。ただ、決して偉ぶっているわけでは無くても偉そうにしている様に見えてしまい、いじめられる原因になってしまいます。これも、可愛い女の子がいじめられる原因となる、妬みや嫉妬の気持ちから来ていると言えるでしょう。
◆みんなより動きが遅いから
自分よりも、テキパキできる子に対しては偉そうだからといじめる反面、みんなの動きについていけないのんびり屋さんもいじめられる原因になります。自分たちとは動きが違い、何をしても出遅れてしまうタイプの子どもに対して怒ったり、からかったりするいじめをするようになるのです。
ただ、他の子と比べて何をやっても遅い子どもの場合、例えば発達障害がある事も考えられます。先生も学校では注意して見ている場合が多いのですが、先生の目が届かない子どもの間では障害の事などお構いなしに、いじめられる原因になってしまうのです。
◆真面目すぎるから
先生のお気に入りになりやすい真面目なタイプの子どもは、真面目過ぎると言う理由でいじめられる原因になる事があります。
例えば、自習の時間に皆が騒いでいても一人で大人しく勉強しているので空気が読めない子と思われ、冗談を真に受けてしまうのでからかわれやすいのです。
真面目な子どもは無駄口を叩かない物静かなタイプが多く、いじめられても先生や親に離すことなくじっと耐える傾向にあります。
◆身体的な特徴があるから
身体的特徴と言うのは、例えば太っていて目立つところに痣やホクロがあるなど、決して本人が悪い訳では無く、どうにもならない体の特徴です。本当は個性としてみてあげないといけないものでもあります。しかし、見た目にほんの少し特徴があるだけでもいじめられる原因になってしまう場合があるのです。
そもそも、身体的な特徴に関しては絶対に指摘してはいけない部分でありますが、それでも尚、いじめの原因となるのが子どもの残虐性が垣間見えるところです。
いじめの原因、いじめられる側からの言い分
いじめは、一方的にいじめられる側がその原因を作ってしまっているのでしょうか?例えば、身体的な特徴を馬鹿にする事から始まるいじめは、いじめられる原因が本人だけにあるとは考えづらいと言えます。
最近では、いじめる側に問題が潜んでいて、いじめをしなければ気が済まない精神状態になっている可能性が高いことが指摘されているのです。そのような精神状態になってしまっている原因となっているのは、家庭環境や育て方によるものだとも言われています。そこに、注目しないケースが実に多いし目をつぶることも往々にしてあります。
いじめられる原因は自分が安心するため
どんな人でも、不安を感じていたいとは思わないはずです。いじめる側の子どもは、不安な気持ちを強く感じておりその気持ちを隠すためにいじめをする事で解消しているとも考えられます。
一人ぼっちになりたくない、いじめの対象者になりたくないと考えたら、皆と一緒になって今いじめられている子をいじめれば、仲間外れにされる事もいじめられる事も無いと考えて安心するのです。
また、特に率先していじめている子は、自分には同調してくれる仲間がたくさんいるという安心感が芽生えます。ではなぜ、いじめをして安心を得ようとするのでしょうか?
不安を感じやすい子どもの親は、過保護や過干渉である場合が多いことも考えられます。子どもの事が心配で、つい手を出してしまう。そんな親の様子は子どもにも伝わってしまい、同じように自分の行動にも不安が生まれます。
それとは逆に、親と子の関わりが希薄で愛情不足により不安を感じやすくなってしまっている場合も考えられるのです。家族に話を聞いてもらえない、テストの点数が悪いと激しく叱られる、家に帰るといつも一人ぼっちなど、不安が生まれる要素がたくさん家庭環境に潜んでいる事もあります。
いじめられる原因は優越感に浸りたいから
いじめる側の子どもは、誰かをいじめる事でその子よりも偉くなったと思い優越感に浸ります。自分より可愛い子や勉強ができる子、運動ができリーダーシップのある子をいじめる事で、自分の方が優れていると錯覚してしまうのです。
いじめられている子どもは、次第に元気が無くなっていきます。すると自分は誰よりも偉くなったと感じ、次から次へとゲームの様にいじめをヒートアップさせていくのです。
ところが、裏を返すといじめを繰り返す子というのは劣等感でいっぱいになっている子どもが多いのです。劣等感がいつも自分を苦しめるので、そこから回避するためにいじめを繰り返します。
家で親から褒められることが無く、できない部分ばかりを責められて否定され続けると劣等感の塊になります。親は、きっとこの子にはできるはず!と大きな期待を掛けて厳しく育てているつもりなのかもしれませんが、子どもにとってはそれがかなりのプレッシャーとなっているのです。
そのプレッシャーは、劣等感へと変わっていきます。そんな時に、いじめで優越感を得られる事を知ると、次から次へと繰り返し行うようになるのです。いじめる側に何の問題が無くても、優越感を得るためのいじめがあります。
いじめられる原因は八つ当たりによるもの
子どものいじめでは、いじめられる側に問題が無いにも関わらず、いじめる側の単なる八つ当たりが引き金となって発生している場合があります。イライラする気持ちの矛先を、その原因となるものにはぶつける事ができず、気の弱い子どもに対して怒りをぶつけてスッキリさせているのです。はっきり言って、卑怯な行動です。
弱いものいじめをしているという認識は本人には無く、ただ単純に自分の怒りを鎮めるためにいじめを繰り返している場合も少なくありません。怒りやストレスのはけ口としていじめを行い、気持ちが晴れると更にエスカレートしていくのです。
いじめられる原因は自分がいじめられたくないから
子どものいじめでは、必ず最初に切り出すリーダー的な子どもが存在します。その子に同調する仲間が増えていき、最終的に集団でのいじめに発展していくのです。クラス全員が一人の子どもをいじめるという話も、よく耳にしますよね。
でも、必ずしも全員が同じような気持ちでいじめを行っているわけではありません。中にはいじめはいけない事だと認識できているにも関わらず、加担してしまっている場合もあるのです。
みんながいじめているから、という理由だけでいじめる側についている子どもも少なくありません。そして、いじめる側に入らなければ自分がいじめられる立場になってしまうかもしれないという不安から逃れるためなのです。
その場合、いじめられる原因がいじめられている子どもにあるのでは無く、自分を守るためだけにいじめている事になります。集団によるいじめは、自分がいじめられるのを避けるために集団化してしまっているとも考えられます。
いじめられる原因は一つではない
いじめられる原因は、いじめられる側にあると言われたり、いじめる側にあるとも言われます。しかし、実際のところどちらが正しいのかという結論は出ていません。
もちろんいじめは、どんな理由があってもしてはいけません。なぜなら、子どものいじめはクラス全体で集団化してしまう場合も少なく無いので、いじめられている本人にとっては心のダメージも相当大きくなります。
ただ、ここで述べたようにいじめられる原因は双方にあると考え、その双方の原因となるものがいくつか重なった時に発生しているようです。更に、いじめる側の原因については、家庭での育て方にも大きく影響していると考えられています。
いじめ撲滅のためにも、これまで述べてきたいじめられる原因から、子育ての中でも注意すべき点があるという事が言えるでしょう。
そして今、いじめられる原因やいじめの原因は親の責任であるとも考えられています。子どもたちがどちらの立場にもなる事が無い様、今一度、家庭でのお子さんとの接し方について振り返ってみる必要があるでしょう。