ひきこもり 部屋から出た
不登校新聞の記事の中で、7年ぶりに部屋から出たケース25歳のある日、僕は「7年ぶり」に鏡を見た。そう、僕は18歳から7年間、自室にひきこもっていた。その日、7年ぶりに部屋を出たのだった。
鏡を見て驚いた。髪は伸び放題で、ストレスからか、所々白髪がある。そしてなにより、太っていた。15分間ほど、直立不動のまま動けなかった。信じられなかった。10代のときは、レディースの服が入るくらい、身体が細かった。
でも今は自分が知っている自分じゃない。絶望的なまでに太った長髪の男、それが僕だった。恐る恐る体重計に乗ってみると、目を疑った。何回測り直しても、「エラー」と表示された。7年前の体重が62kgだったことは覚えている。後で知ったことだが家の体重計は100kgを超えるとエラー表示になるのだった。
玉手箱を開けておじいさんになってしまった浦島太郎のように、僕は7年ぶりに部屋から出たら100kgを超えた体重になっていた。その事実がのみ込めなかった。完全に狼狽した。太ったからか、汗が噴き出してきたので、何はともあれ風呂に入った。
7年の間、体重が増えたことを恥ずかしい感情もあるが、そのことを逆手に取り相手をひきつけることもあるので、想像を絶する体験をしたが前向きに生きているのが何よりも嬉しい。
それと、ひきこもりをしている息子に対して何も言わなかった母親のケース、
社会のなかで取り残されていると感じることもあるが、不登校やひきこもりに関する居場所や支援してくれる方は外の世界にかならずいるのだ。またそういう人と対話し関わっていくことで気持ちが穏やかになっていった。
今でもひきこもってはいるが、当時のようなつらい気持ちは感じない。自分の生き方を肯定できるようになったからだろう。
だいぶあとになって母親がなぜあのころ「学校へ行きなさい」と言わなかったのかを知った。それは、もっともつらい状況に僕がいたことを「わかっていたからだ」という。
いじめなどとちがって明確な原因が、僕の不登校はわからないのだ。重要なのは不登校になった原因を探して、それを解決して登校させるということではない。「学校へ行くことがつらい」という当時の僕自身の心に向き合ってくれた母に今でも感謝している。